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KERS(運動エネルギー回生システム)

2024.04.24

KERSの機能
来年はバッテリーとフライホイールという2種類のKERSシステムが使用されると予想されている。

バッテリー・システムの方が人気の高い方法のようである。これはスーパーキャパシタ・バッテリーに制動エネルギーを保存して、必要なときにホイールの駆動力として放出する。

フライホイール方法は、ウィリアムズ(およびおそらくホンダ、トヨタ)が採用するようだ。この場合、制動エネルギーはフライホイールを回転させるために利用され、追加の馬力が必要になると、ホイールは回転するフライホイールと組み合わされて出力が増加する。

規約は1周あたりのKERSシステムの出力を60kW(約80馬力)まで、エネルギーの保存量を400kJまでに制限している。つまり、1周当たり6.7秒間に渡って80馬力を追加できるということである。

このアイデアは、F1に環境技術の開発を強いるだけでなく、オーバーテイクも増加させる。追い上げているドライバーは、先行マシンに追いついたときにKERSを利用して、加速のブーストを得ることができる。

もちろん追われているドライバーも防衛のために同時にKERS装置を使うことができる。したがって追い上げているドライバーの馬力面でのアドバンテージは相殺される。

しかし追加エネルギーの保存が制限されているので、ドライバーはこの装置の利用法に関してはかなり戦術的にならなければならない。

エネルギーを一旦利用すると回復するまでに時間がかかるので、トラックの重要なポイントに到達したときに保存されたエネルギーを使い果たし、後続マシンにまだエネルギーが残っている場合もあり得る。

原則として、これはF1に興味深い新局面をもたらす。しかしまず克服するべき多くの困難があり、チームが来シーズンの開幕戦までに装置を用意できるかどうかは不明である。

KERSの使用は義務付けられてはいないので、一部のチームは少なくとも2009年の開幕時には搭載しない模様である。

難問
バッテリータイプのKERS装置は、トヨタ・プリウスなどのハイブリッド乗用車に利用されているが、F1の用途で要求されるこの技術はかなり違ったものになるだろう。

ハイブリッドカーのバッテリーは、車両の寿命と同程度の耐久性がなければならない。

F1では、バッテリーは一定の出力についてできるだけ小型かつ軽量である必要があり、技術的には「最先端」であるので、長くても1回のレース週末だけ耐久すればよいだろう。

BMWのマリオ・タイセンは、F1用装置の出力-重量比は、同社のハイブリッド乗用車に使用されている装置に比べ、3~4倍であると指摘している。

バッテリーの漏電火事および感電という安全上の問題がある。

マシンが電気エネルギーを保存したままピットガレージに戻ってくると、チームはそのエネルギーをマシンから保存装置に放出させる装置を必要とするだろう。

つまり、トラック上でマシンが動かなくなった場合に備え、マーシャル・ポストも同様の装置を利用する手段が必要になるだろう。

リチウム・バッテリーには化学物質が使用されているので、バッテリーの爆発は、ドライバーやクルーだけでなく、近くにいる人全員にとって危険である。

チームは、事故があっても危険がないような方法でバッテリーあるいはフライホイールを設置できると考えているが、トラックでの使用が認められる前に各設計について標準的なFIAクラッシュテストに組み込む必要があるだろう。

効果
今までのところ、パフォーマンス上のメリットは絶大ではないと見られている。

わずか7秒足らずの間に80bhpが追加された場合、数字的なメリットはラップタイムにして約0.3秒になるだろう。しかし、このタイム短縮から、最適とは言えない重量配分の効果を差し引かれなければならない。

バッテリーと付属部品を含めたこの装置の重量は、約35kgになるだろう。

チームは現在、約60~70kgのバラストを使用しており、特定のトラックにおけるマシンの動力学に最適となる場所に配置されている。しかしどこに配置するにしても、重心をできるだけ低く維持するために、バラストは非常に低い場所に配置される。

現在のバラストの約半分がKERS装置にとられることになるので、重心の高さは上昇し、ホイールベースの範囲内で設置できるバラスト位置の柔軟性が制限される。

また、この装置が飽和してそれ以上の制動エネルギーを受け入れられなくなると、後車軸のトルク効果に潜在的問題がある。軸重の段階的変化により、ブレーキング中のマシンが不安定になる可能性がある。

現在の計画では、装置の出力・保存容量は今後のシーズンで徐々に増量することになっている。2011年には100kwおよび800kJに飛躍し、2013年には後車軸だけでなく両車軸から200kwおよび1,600kJを認める予定である。

しかし当然のことながら、第一世代の装置を安全に利用できるようになるまでには非常に多くの作業が必要である。